秋葉原に住むIT技術者の単なる雑記帳

【お知らせ】【Mastodon】通報は「適切に」使って欲しい(その3)

まさか「その3」を書く日が来ようとは…。

 しかも、本日は当初予定では全くの別件について触れるつもりでした。

通報

 今回は、私が運営するリベラル(自由主義者)向けコミュニティ「LIBERA TOKYO」を含む複数のコミュニティにてどうやら同内容の通報があったらしく、通報のあったコミュニティの管理者が巻き込まれるばかりか、被通報者が通報者との直接やりとりを試みるも話が全くかみ合わず決裂するという事態にまで発展してしまいました。

 敢えて問題となった投稿へのリンクは貼りませんけど、概ねこのような展開でした。

  1. とある方(以下、「被通報者」と称す)の発言が、特定ユーザによって通報される。なお、そのユーザ(以下、「通報者」と称す)は複数のアカウントを用いて通報および通報呼びかけをおこなっているようだが、そのうちの一つが、私の運営する「LIBERA TOKYO」に登録されているアカウントである。
  2. LIBERA TOKYO」で受け取った通報の件については私も調べたが、特に当該発言からは通報で指摘されているような特定カテゴリへの差別の意図を読み取ることは出来なかった。
  3. どうやらほかの通報を受け取ったコミュニティの管理者も概ね私と同様の判断をしたようだ。
  4. 被通報者はいわゆるお一人様サーバのユーザであることもあり、通報があったことについては検知していた模様。また、具体的に誰が通報したのかについても裏取りしたようで、通報者に対し被通報者自身の差別被害を元にした発言であり、差別の意図はなくむしろ差別をするなと言いたかったと主張。
  5. 通報者は特定のキーワードを用いていることそのものを問題視して通報したと主張。
  6. 両者の話し合いはかみ合わず交渉決裂。

 正直、私もすべての差別問題に対して詳しいわけではなく、この対応が適切なのかどうか全く自信がないのですが、今回の件で私は、次の理由で今回の通報への対応を見送る決定をしました。

  1. 表現に若干の問題はあるのかも知れないが(その表現が何なのかについては後述)、発言内容の趣旨そのものに問題があるとは言いがたかった。
  2. 被通報者のほかの発言を調べてみても、特に今回通報者側が主張する問題点に関連するような問題を確認することは出来なかった。

 なお、私が「LIBERA TOKYO」で通報を受け取ったときの対応としては、基本的には次の流れでおこなっています(まあもちろん例外もあるけどそれを言い出すとキリがなくなる…)。

  1. アカウント名や自己紹介に問題があると判断出来るか? あれば即刻アウト。
  2. 通報内容に特定の発言が含まれていればその内容を確認。あからさまに問題が認められる場合はアウトだが、昨今では結構グレーゾーンに位置するものも多く、即決することが難しい。
    • なお、直接その発言に問題がある場合でも、当該発言が通常時点よりも一定期間(目安としては約1ヶ月)以上過去の場合は判断保留。直近でも問題点の改善が認められない場合はアウト。認められる場合は対応見送り。
  3. 自己紹介や通報時に指定された発言から問題点を認められなかった場合は、その前後の発言にも目を通して文脈を追ってみる。そこで通報理由に関連する問題点があればアウト。
  4. これとは別に、直近の発言について、一応通報内容以外の問題点があるかどうか(例えば別件の差別発言とか犯罪をほのめかすような内容とか)を確認する。問題ありと判断した場合は、内容次第だがアウトとする場合がある。
  5. ここまで確認して特に問題なければセーフ。

 もっとも、アウトとは言いましても、これはウチ(「LIBERA TOKYO」)に限らずFediverse全般的に言えることですが、被通報者が自分の運営するコミュニティの外のユーザである場合、最も重いペナルティでも自分の運営するコミュニティと被通報者の連合を遮断することが限界です。

 システム上では、他サーバのユーザに対する「停止」措置も自サーバのアカウントに対する「停止」措置と同じなのですが、自サーバのユーザに対して停止措置をおこなうと本当にアカウントが凍結されるのに対し、他サーバのユーザの場合はあくまで自サーバに関われなくするだけで、他サーバのユーザに対して直接的に何か出来るわけではありません。この仕組みがFediverseをややこしくしているもので、悪意ある者ほどモデレーションの緩い大手サーバにユーザ登録する傾向にあるのはまさにこのような事情があるためです。

 今回私は、通報者の主張する表現の問題に対し、被通報者の当該発言の文意も加味して読み取った結果「問題なし」と判断し、通報対応を見送る決定をしました。

 しかし、通報者の主張する「その表現を使うことそのものが問題」という点についても、一面では正論であるため、今回の件に巻き込まれたサーバ管理者は大いに判断に悩みました。

 具体的にどの表現がどう問題なのかについては後述しますが、実は本件も以前このブログでも取り上げた件、とりわけ下記の件に関連しています。

 そのときは、通報者(複数)と被通報者がそれぞれ自分たちの気に入らない人間を公然と叩く構図とみて、私は受け取った通報に対する調査を打ち切りました。その後被通報者側に重大な問題、より正確にはその問題が改善されていないことが見受けられ、被通報者が「LIBERA TOKYO」上で登録している別アカウントも含めて永久凍結という措置に踏み切りました。

 なお、そのときの被通報者がブロックを呼びかけていた相手が、今回の件の通報者と同一人物です。

 実は今回の通報者となっている方は、昨今「LIBERA TOKYO」のユーザさんの中でももっとも通報数の多い方のひとりです。ただ、近頃のその方からの通報では、明らかに「LIBERA TOKYO」との連合が不適切であると判断出来るケースは少なく、今回のように対応を見送ってしばらく様子見するという判断をするケースの方が多くなっています。

 今回は被通報者側からも通報者が具体的に誰なのかがわかり、その末の交渉決裂となってしまいましたが、もし今回のように通報者の対応に問題があると判断されたならば、是非、そのユーザの所属サーバの管理者に直接状況を述べるか、それこそ所属サーバに対して問題発言を通報するかしていただければと思います。

 で、今回は特定の表現に対する見解の違いが交渉決裂の理由となりましたが、それが何か?

 ⚠差別表現にあたる表現を含むため、そのような表現を目にしたくない方は、ここから先は読まずにページを移動していただければと思います。⚠


今回具体的に何が問題だったのか(⚠閲覧注意!!⚠)

 では、今回通報者が被通報者の発言の何を問題としたのかと言いますと、「生活保護」を略した「生保」という言葉が生活保護者に対する差別表現であり、その表現を使うことそのものが問題だ、という主張です。

 反面、被通報者は「生保」という言葉を差別表現であると知らなかったとの主張です。少なくとも、その言葉が実際に使われている通報対象となった発言内では、生活保護者に対する差別の意図は全く認められませんでした。私に限らず同様の通報を受け取ったほかのサーバの管理者諸氏も概ね同様の見解です。むしろ被通報者は、生活保護者に対する差別に不快感すら示しています。

 生活保護者に対する差別表現で、具体的なものに「ナマポ」というものがあります。具体的に何故そんな表現になったのかについては、興味ある方は各自調べてみてください。まあ、この表現そのものが直球の差別発言であることは疑う余地はなく、もし今回被通報者が「ナマポ」という言葉を使っていたならば、それこそ通報者の主張に一理あると言わざるを得ません。

 しかし今回は、「ナマポ」という表現が使われたわけでもなく、しかも文脈からも他者への差別を意図したものと読み取ることの方に無理があります。今回は「生保」という表現は単純に生活保護を略しただけだと判断し、被通報者へのペナルティを科さないことにしました。

過去には「LIBERA TOKYO」ユーザが同様の表現の問題で通報される例があった

 今回の件と直接関係する話ではありませんが、今回同様の表現の問題で、今回の通報者とは別の「LIBERA TOKYO」のユーザ様が被通報者となるケースがありました。

 通報を受けたのは「LIBERA TOKYO」発足から間もない2020年7月。とある方の投稿の中にナチスのシンボルが含まれることについて、海外の方から指摘を受けました。

 そのとき発言された方からは、投稿中に含めたナチスのシンボルはナチス礼賛の意図のためのものではなくむしろやってはならない例として挙げたとのことで、とりあえずそのときは当該添付ファイルを非表示にするという対応をしました。その後追加の通報は特になく、問題がそれ以上大きくならずに済みました。

 今回、もし私が「生保」を差別表現とする通報者側の主張を鵜呑みにして被通報者側にペナルティを科してしまったならば、4年前のナチスシンボルの通報に対して何もしないという判断を下すのと同等レベルの誤った判断をすると言うことになります。まあ、4年前の件は、添付画像を隠すという軽めの対応にとどめた上に、その投稿をしてしまった方もその後同様の問題を再発させていないので、事なきを得ておりますが。

前々から思っていることだが、言葉狩りには加担しないししたくない。

 前半で触れたその2やその前日のその1でも感じていたことですが、昨今、通報を言葉狩りの手段として使われるケースが増えてしまっているという感触を拭うことが出来ません。

 特にその1では通報者が通報の本来の用途から逸脱していることを認識した上でサーバ運営者(ここでは私)に対応を「命令」しており、こちらとしてはその通報の受理を拒否しました(その後そのときの通報者はアカウントを消した)。

 昨今、自称反差別の界隈を見ていても感じることですが、言葉狩りが目的化してしまい、差別反対と言いながら差別を本質的になくして行こうという姿勢が見られないというケースが散見されます。その2はその姿勢が露骨に出てしまったケースで、語弊を恐れずに敢えて言うならば「集団リンチ」に近いと感じました。

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This video is created by Stable Video Diffusion.

 今回のケースでは、表現そのものに問題があるという主張とそれが差別表現に該当するなんて知らなかったという主張(そして問題となった表現はそもそも差別表現とは言えない)が真っ向から対立したケースですが、言葉をあげつらってその表現をやめさせようとしても差別問題の本質的な解消には全く寄与しないと思います。

 こんなことを言ってしまうといわゆる反差別界隈を敵に回してしまうかも知れません。しかし、差別反対と言って言葉狩りすることが問題の本質的な解決に繋がると思えないばかりか、言葉狩りそのものが目的化してしまいかえって害悪となるケースすらあります。

 もし相手が使っている表現が差別表現でありかつ相手がそれを差別表現と知らずに使っている場合は、糾弾する前に「これは差別表現だよ」と一言言うだけでも、相手の対応はだいぶ違ってくると思います。もし相手から何故と聞かれたときにちゃんと理由を説明出来、相手を納得させることが出来れば、そのほうがいきなり言葉狩りするよりもよほど全体的によい結果となります。

 まあ、もっとも、一部の言葉狩り大好きマンは「お前は差別主義者だ」と頭ごなしに言ってくるからたちが悪いのですけどね。実際に私自身も言われました。そのように上から目線で絡んできて相手を屈服させるようでは、お前の大嫌いな差別主義者と同類です。

 実際にSNSでは、私はその手の、いわば「反差別原理主義者」のウチの何名かをブロック済みです。会話が成り立たないからです。いまだに反差別界隈ではその手の連中の発言がありがたがられているのが信じがたいです。本気で差別問題と向き合う気があるのであれば、己の言動にこそまず気をつけるべきなのですが。

 今回の通報の件ではいろいろと考えさせられました。

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