流動体
本屋に行くと、今は本当に人がいない。
昔は店に入ると、手前のおすすめ棚に自然と目がいったものだが、今は人がいないことを認知した後、店内全体が目に入ってくる。
誰もいない店内を眺めていると、本屋の照明がこんなにも白かったのかと驚きがある。
白い光線のような光が店内に降り注ぎ、目に暴力を与えてくる。
その光線を浴びながら、当時の人たちは静かに消えていってしまった。
本屋に人がいなかったことに気づいたのは数日前のことだが、その感想は、家の中で何もせずにただ立っていたときにふと思い浮かんだ。
家の中でただ立っているというのは少し異常だ。
座っているのと立っているのとでは、意味がまったく違う。
座っていれば昨日は良い仕事をしたんだろうと思えるが、立っているときは、自分の中で何かが異常を検知しているのに、何が起きているのか、誰に相談すればいいのか、まったく分からない時だろう。
そもそも本屋のことなど、自分の中では本題ではなく、この異常状態から逃げるために、たまたまその日に選ばれた逃避先にすぎない。
そして、俺の逃避先はいつも奥行きが狭く、逃げ込んだ世界はあまりにも狭く、すぐに現実へ引き戻される。
この話も、誰に語られることもなくいつか消えていくだろう。
前日の行いで翌日の顔つきが犯罪者のようになるかどうか決まる、ということをかなり前から知っていたので、今日も少し緊張しながら鏡を見た。
映っていたのは普通の顔で、あまり仕事をしていない人間の顔だった。
昼は歩いてショッピングモールへ行った。
エレベーターの中で赤ちゃんが一点を見つめていて、しばらくして俺と目が合った。
赤ちゃんとは目を逸らさなくてもいいのが本当に助かる。
見ていて気まずい箇所がない。
夜は電車に乗った。
ぶつかるとしっかり痛いくらい、バッグに何かを詰め込んでいる人が多い。
俺の荷物も重かった。重い荷物を背負うのは、普通に具合が悪くなる。
電車から人がシチューのように流れ出ていったが、特にお腹は空かなかった。