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じゃがりこ

洗濯物を干そうと外に出たら、いつもより格段に寒かった。
足先が冷たすぎるので、試しに買ったミズノのルームシューズを履いてみたら、思った以上に効果があり、体全体の調子まで整った。

最近は、体を目覚めさせる方法として、体のパーツを一つずつ意識し、そこに強く力を入れる、ということを体得した。
そうするとそのパーツがどこに属しているのかが分かる。
体調が良くなるというより、体調が悪いことに納得できる、という効果に近い。
いずれにせよ精神にはプラスに働いているので、現状は良しとする。

他人を絶対に家に入れない主義の代わりに、得体の知れない誰かと一緒に住んでいたら、そいつは何をするのか、という想像をする。

小石や枯れ葉を靴に入れたまま帰ってくる、というのはあるが、そいつは少し大きめの木の枝をよく持って帰ってきては、付いてきてしまったと言い訳をする。
醤油を取ってほしい時だけ、声が昭和の音質になり、声を渋くしてお願いしてくる。
散歩中、どこで濡れたのか分からないびしょ濡れの犬がこちらを見ている。
そいつの近くにはいつもイスがないので、旅行には行かないくせにスーツケースに座っていた。
ヤンキーに絡まれ、アニメのような煙に包まれて一度見えなくなった後、煙が晴れると用心棒のような格好になっている。
そんなやつとはもちろん一緒に住めないが、年に一度くらい、忘年会の帰りに遠くから出くわしたい。

気づけばコーヒーは空になり、お昼の時間になっていた。
今日は妻と、地元で揚げ物の定食を出している店に初めて行った。
エビとカツのセットを頼む。
生物として軟弱なエビが揚げられ、食感はほとんどなかったが、小鉢が二つ、サラダ、味噌汁が付くことで定食としての体裁を保っていた。
こういう定食が食べられる感じは自炊では味わえないので、行って良かったと思う。

帰りは河原沿いの道を少し歩いた。河原はとにかく冬を表していて、どうりで顔が冷たい。
春になったら、またここに座ってハンバーガーを食べたいなあと思いながら、今の冬に対しては感想はないのか、と思った。
冬は好きだが、感想を感じとるのが面倒臭い。

帰る途中、コンビニからじゃがりこだけを持った女性が出てきた。
手をコートに完全にしまい込んでいるせいで、コートから出ているのは手ではなく、じゃがりこの容器だった。
その女性も例外なく冬に適した格好をしていて、自分と同じ面に立っているのが分かる。
こういう時、俺の視界はゲームのチュートリアル画面のように情報が最低限に削られ、立体の方眼紙のようになる。
俺とその女性にプロパティが割り当てられ、点と線で関係性がないことが分かる。

今日も日が暮れるのが早い。
日が落ちてきたと思った瞬間、俺はカーテンを閉める動作に入る。
カーテンに近づきながら、まだ明るいのに閉めるのか、という自分の意思とは関係なく、手はカーテンを閉めてしまう。

今日は俺が二人分のミートソーススパゲティを作る。
俺のソースは麺に絡まないので、スプーンをうまく使って食べてほしい。